読んだ本

2013年10月28日

『小暮写眞館(上)』を読了!!

宮部みゆき氏の『小暮写眞館(上)』を読み終えた。
単行本が出たときに、そのタイトルと装幀だけで、「読んでみたい」と強く思った本である。

『小暮写眞館(上)』 宮部みゆき・著 『小暮写眞館(上)』 宮部みゆき・著

『小暮写眞館(下)』 宮部みゆき・著 『小暮写眞館(下)』 宮部みゆき・著

宮部作品は『火車』、『レベル7』、『理由』、『模倣犯(1−5)』、『英雄の書(上・下)』などを持っている。
ベスセラー作家であるし、興味ある作家でもあるので読み進めていきたいいとは思っているものの、過去ログを調べてみると『火車』しか読んでいないようである。
もちろん、『火車』の展開に驚嘆し、宮部作品に興味を持った読者の一人なのだけれども。

というわけで、わたしにとしって2冊目となる宮部みゆき作品である。

宮部作品といえば、『時代物』と『ミステリー』というイメージだけれども、この『小暮写眞館』は今までの作品とは異なり『青春小説』という感じのするもの。

−−−−

全部で4話構成だが、上巻はそのうち『小暮写眞館』と『世界の縁側』の2話が収録されている。

既に主をうしない売家とにっていた『小暮写眞館』を、サラリーマンではあるものの酔狂な父が購入したところからはなしが始まる。
どちらも『心霊写真』と思われる奇妙な写真が発端だ。
『小暮写眞館』に住むことになった花菱英一(高校1年生)のところに持ち込まれたもの。
膳を囲んで6人の男女の他に写っているもう一人の女。
美人だが、泣いているように見え、何だか儚げな感じがする。
この写真を頼りに、花菱英一と、その友・テンコ(店子力(たなこつとむ))が真相に迫っていく。

もう一枚の写真は女子バレー部に所属している多部亜子(たべあこ)という先輩から持ち込まれたもの。
多部と、多部の尊敬する先輩である河合公恵とその両親、が楽しそうに写っている写真なのだが、やや左後方に河合家族3人が同時に写っている写真なのである。
左後方の3人は悲しげに泣いているところが、なんだか不気味な写真である。
写真を撮ったのは足立文彦という河合公恵の婚約者であるということも、のちのち判ってくるのだが、写真を提示されたと時には何も知らされていない。
写っている人が判っているのに河合公恵との接触はしてはいけないと念押しされてしまう。
こちらの件は、花菱英一とコゲパン(テンコの友達で、英一の友達でもある、色黒の寺内千春)が追跡していく。

どちらの写真にも、当然のことながら多くのものがたりが隠されていて、それが明らかにされていく。
表題作の『小暮写眞館』もよかったけれど、もう一作の『世界の縁側』は、世界に打って出る町工場の社長(河合公恵の父・河合富士郎)とその顛末、そして最後がハッピーエンドを予感させる結末になっていて、こちらのほうが読後感が爽やかであった。


#情報科教員MTの読書記録・・・・2013-10-22から2013-10-28
                     7日で一回読み終えた。


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2013年09月05日

『いとま申して−童話の人びと−』を読了!!

北村薫氏の『いとま申して−童話の人びと−』を読み終えた。

北村薫氏の父の死に際して、読んだ『父の日記』を題材に、父の足跡を辿る形の小説である。


『いとま申して−童話の人びと−』 北村薫・著 『いとま申して−童話の人びと−』 北村薫・著

神中(じんちゅう:神奈川中学校・現在の希望ヶ丘高等学校とのこと)、保土ヶ谷、恩田町など、直接の繋がりはないものの、子供時代のわたしにとっても、懐かしいことばが並ぶ。

子供の時に町田市に住んでいたわたしにとって、高ヶ坂団地を過ぎて、恩田川を渡り、成瀬に遊びにいったりしていた。
当時は恩田町のことは知らなかったが、恩田川は恩田町から来ているのだということを知った。

ちなみに北村薫氏は高校の国語教師を経て、作家になられた方だと聞いているが、祖父の代までは代々医者の家系(保土ヶ谷の眼科医)だったとのこと。
そして、それもかなりの名士であったが、父が子供の時に傾き、土地を売って生活するようになったとのこと。
とはいえ、ある程度の余裕があったようで、北村薫氏の父はこの5男だったにもかかわらず、神中から慶応大学に進んた。
そして、童話関係の同人に入っていた。
日記はその童話の関係の同人での活動が主に書かれている。

母方の祖父・鈴木太郎左衛門も田奈村(長津田・恩田・奈良の三つの村が合併。長津田の『田』と奈良の『奈』から田奈村となった)の村長で俳人としても知られた大地主だった。

この本は、ところどころに父の日記がちりばめられていて、当然、一段字下げがされていて引用部分が分かるようにはなっているのだが、読んでいると、ここでいっている『私』は北村薫氏なのか、北村薫氏の父『宮本演彦(みやもとのぶひこ)』氏のことばなのかが判りにくい感じがした。

66ページに書かれている『田川水泡』のペンネームの由来(タ、カ、ミズ、アワ=高見沢(本名))を、この本で始めて知った。
田川水泡氏は随分前の漫画家で『のらくろ』を描かれた方だが、わたしが子供の頃に再び流行した。
玉川学園のご自宅に一度サインを貰いに行ったのだが、残念ながらお会いすることはできなかった記憶が残っている。

もうひとつ、父の演彦氏が投稿していた雑誌に、若き日の淀川長治氏、そして金子みすゞがいたことがこの本に書かれていて、興味を持った。

#情報科教員MTの読書記録・・・・2013-09-01から2013-09-05
                     5日で1回読み終えた。

#例によって、最近ブログ投稿は滞っていて、この記事を実際
 に投稿したのは、2013-10-01 22:44頃である。


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2013年08月01日

2013年07月に読んだ本たち

2013年07月に読んだ本たちを一覧してみた。

『赤毛のアン』を読了!!(2012-07-11)
『キケン』を読了!!(2012-07-14)

1ヶ月で2冊読み終えた。

#ここのところネット上への記事投稿が滞っている。
 この記事は実際には2013-08-12 13:56頃に投稿した。

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2013年07月11日

『赤毛のアン』を読了!!

普段、このブログでは『だ・である調』で文を書いている。
開設当時は『です・ます調』で書いていたのだが、個人的には、『だ・である調』の方が簡潔に表現できるので好きなのである。
とうことで、現在は『だ・である調』で記事投稿している。

以下の文にあるように、この投稿は中学校・図書委員会の生徒たちが作成し夏休み前に全生徒に配布した『文大杉並 夏の26冊』というパンフレットに寄稿したものである。
『文大杉並 夏の26冊』は中学校の1年生から3年生までの全26クラスの各図書委員がおすすめの1冊を紹介したものである。

ここでは、その記事をコピー・アンド・ペーストして投稿することにした。
従って、いつものの文体ではなく、『です・ます調』になっている。
こういう形での公開では、だいたい学期に1回程度しか紹介できないと思われるので、もし、何か別の本を読んだ場合には、ここにも投稿しておこうと思っている。
そのため、実際の公開はこちらの方が早いものがあるかもしれない。

では、終業式の日に配布した『文大杉並 夏の26冊』の中から、私が寄稿した文を転載する。
パンフレットに寄稿したものは、紙面の都合で書けなかったが、『ラブロマンス』としての位置づけもあるので、女子向けの本として今でも十分に楽しめるものだと思う。

『赤毛のアン』 モンゴメリ・著 『赤毛のアン』 モンゴメリ・著


#情報科教員MTの読書記録・・・・2013-07-01から2013-07-11
                     11日で1回読み終えた(随分
                     ゆっくりペースであった)。

#実投稿時間は2013-08-01 14:15ころである。


−−−−

<<赤毛のアンを読んでみた>>

 中学校の図書委員会が頑張っていて、夏休みに読んで貰うための『お勧め本紹介の小冊子』を作っています。図書委員会担当の一人としてそれに便乗し、一文をお贈りしたいと思います。実はここのところで『赤毛のアン』を読んでいるのです。本好きではありますが私は男性なので、この50数年間、『赤毛のアン』は読んだこともありませんでした。

今年度は中学3年生の副担任になったので、カナダ語学研修の引率のお仕事があり、それがきっかけとなってカナダゆかりの作家やカナダに関する本を読んでみようと思ったわけです。その第一弾が『赤毛のアン』。
別の作品(例えば、アリス・マンローなど)も候補にはあったのですが、対象が中学生ということで、第一弾として、まずは『赤毛のアン』を選んだのです。

 私が読んだのは新潮文庫版のもので、村岡花子という方が翻訳されたものです。
中学3年生の教室にある『学級文庫』には、同じ著者による小中学生向けの、青い鳥文庫版『赤毛のアン』がありますので、興味を持った人は読んでみて下さい。
 プリンスエドワード島のアヴォンリーというところに住むマシュウ(このとき既に60歳とのこと)とマリラは兄妹で、自分たちの生活のお手伝いをしてくれる『男の子』を引き取って一緒に暮らすことを希望していたのですが、そこに現れたのが『赤毛のアン』こと、アン・シャーリー。
男の子が来るはずだったのが、手違いで女の子になってしまったというところからものがたりがはじまります。

 マシュウがアンを気に入って自分たちの住まいである『グリンゲイブルズ(緑の切妻屋根:写真はそのモデルとのこと)』に連れてきて、マシュウ、マリラとアン、3人の生活が始まります。この三人の生活が素朴の中にも生き生きとしていて実にいいんです。

Anne_of_Green_Gables_home1 Copyright(c) 2005.10
norito satoh from Wikipedia






 『妄想癖』というと言葉が悪いですが、アンは実に想像力豊かな少女なのです。
『歓喜の白路』、『輝く湖水』、『ウィローミア』、『恋人の小径(こみち)』、『すみれの谷』、『樺の道』、『妖精の泉』、『お化けの森』など、気に入ったところのちょっとした風景や場所に名前をつけ、ロマンチックな輝きを持たせてしまうという天才でした。  

 最初の巻である『赤毛のアン』には、11歳で引き取られてクィーン学院を卒業するまでの5年間が描かれています。この間に、マリラが大切にしていた紫水晶のブローチ紛失事件があったり、友人のダイアナに間違ってワインを飲ませてしまって酔わせてしまったり、咽頭炎にかかって瀕死の状態のミニー・メイという三歳児を吐根で処置して適切に直してしまったりというおはなしが続きます。残念なことにこの巻の最後でマシュウは亡くなってしまいますが、読んでみると、全編を通して、ゆっくりした口調でマシュウが「そうさな、よくわからんな」という感じの言葉を発するところが随所にあります。無口なマシュウですがその言葉には包容力たっぷりの雰囲気があってとても素敵です。

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2013年06月30日

『このムダな努力をやめなさい』を読了!!

成毛眞氏の『このムダな努力をやめなさい』を読み終えた。

『このムダな努力をやめなさい』 成毛眞・著 『このムダな努力をやめなさい』 成毛眞・著


マイクロソフト社(現日本マイクロソフト社)の元社長・成毛眞氏の本は『本は同時に10冊読め!』に続いて、2冊目である。

なんといっても、そのタイトルに驚かされる。

『このムダな努力をやめなさい』

ただ、『努力することをやめなさい』とは、いっていないところが救われる。
『ムダな努力』はやめようということらしいので、一概に努力することは意味がないといっているわけではないと理解する。
何より、『本は同時に10冊読め』では、いろいろな分野の本を、気の向くままに読み、(まるまる一冊全部読む必要はないが)少しでも役立つ部分を探し、自分の知識として入手しようという趣旨のものだったと思うので、『必要な努力はいとわない』ということは変わらないだろう。

全部の項目について記述することはできないが、2章に「ムダな努力と縁を切る、12のルール」というものがあったので、この部分に着目して少し書いておこう。

−−−−

目次から、この部分だけ引用させていただくと

・ものごとに執着しない
・あっさり妥協する
・八方美人にならない
・精神論に振り回されない
・「いい人」を信用しない
・「できる人」を演じる
・無理して社交的にならない
・運をムダ使いしない
・人に「情け」をかけない
・残業はしない
・「相手」を理解しようと努めない
・くだらない人間と付き合わない


どれも、多くの人にとって実行することは難しいような内容が並んでいる。

−−−−

この中で一つ、気になった『精神論に振り回されない』というところには

我慢しない。
頑張らない。
根性を持たない。
私はこのことを徹底している。

という成毛氏のポリシーが書かれている。

私は、適度に我慢もしてきたし、目一杯頑張ってきたし、根性でいろいろなことを乗り切ってきた。
成毛氏の記述によれば、あまりいい意味ではない

『便利な人材である。』

とのこと。

この項目の末尾にも書かれているが、わたしはわたしができること、わたしが好きだと思う仕事に徹していきたいとは思っている。


残業についていえば、最近はできるだけ早めに帰る努力はしているのだが、気合いを入れてやろうと思えば、いくらでも仕事は作ることができる(やらなければならないと思う仕事はいくらでも作れるし、見つけることができる)。
要は、やるかやらないかである。
とはいえ、定時で帰ることなどは全くない。少なくとも2,3時間は残って仕事をしているであろう。
昔ほど、なりふり構わず(時間を忘れて)仕事をすることはしないようにしているが、昔よりは生産性は落ちていると思う。



#情報科教員MTの読書記録・・・・2013-06-30から2013-06-30
                     1日で1回読み終えた。

#実投稿時間は2013-08-05 21:00ころである。
 また、随分経ってしまった。


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2013年06月29日

『田舎の紳士服店のモデルの妻』を読了!!

改めて、「宮下奈都はいいなぁ」と思った作品である。
わたしにとっては『スコーレNo.4』、『遠くの声に耳を澄ませて』以来の3作目だ。
そう、宮下奈都氏の『田舎の紳士服店のモデルの妻』を読み終えた。

『田舎の紳士服店のモデルの妻』 宮下奈都・著 田舎の紳士服店のモデルの妻』 宮下奈都・著


夫が『うつ病』になり、会社を辞めて田舎に帰ることになった妻に、友人(筒石さん)から餞別だと渡された『10年日記』。
毎日書くわけではないが、それに記録するような形で過ぎていく10年が語られるものがたりである。
夫の名は『竜胆達郎(りんどうたつろう)』、その妻・『梨々子(りりこ)』。
子供は男の子二人で、『潤(じゅん)』と『歩人(あると)』。

上司である藤沢さん(販売担当の役員)に「君の顔がなんだか懐かしいんだがね」と、その藤沢の『田舎つながり』という紹介で、知り合った『達郎』と『梨々子』。
達郎は藤沢の出身高校の20年後輩で、地元では一番の進学校の出身であると、藤沢は梨々子に紹介をする。
美男美女のカップルだった。

4年ほどして、夫の達郎は『うつ病』に罹り、田舎に帰りたいといいだす。
『北陸の一番目立たない県の県庁所在地』の田舎に帰るという。
夫に従って、達郎の田舎に移り住む梨々子。

10年日誌の最初に書いた言葉が

いまいましいこと、この上なし。
かすり。


『かすり(かすっている)』、『かすっていない』の『かすり』。
ひとが読んでも梨々子の心情が分からないように厳選した結果の3文字。

ここで、達郎は(達郎の父の友人がやっているという)メンズショップ竹内という『田舎の紳士服店』の広告モデルとして働くことになる。

それで、本書のタイトルは『田舎の紳士服店のモデルの妻』という『の』が3つもつく、『ちょっと悪文』のタイトルである。


兄の『潤』の後を追うようにピアノを始めた『歩人』。
歩人のでたらめなピアノの『バーン』という音に「月輪熊みたいだったね」という『潤』。
「冬眠から覚めたばっかりで、まだ寝ぼけてて、お腹も空いてて」
「あのバーンと鳴らした音、熊が伸びをして吠えたみたいだった」
と表現した『潤』の感性。

区民運動会に誘われる梨々子たち(後の記述から考えると、ここの部分は2年目の参加の部分だ。1年目は5位に終わったらしい)。
種目は夫との二人三脚。
日付は10月11日の日曜日。
本格的な二人三脚で、前のグループたちは凄いスピード走っていく。
「どうしよう。達郎さん」と怖じ気づく梨々子に「大丈夫だよ」と、なだめる達郎との会話で、この日が梨々子の誕生日であることがわかる。

10年日誌には、1年くらい続いた10月のある日とか書いてあるので、区民運動会の前か、後かはハッキリしないが、

どっこい、生きている

と、梨々子は日誌に書いている。
三位だったのだが、二位との間にそれほど差がなかったのでペースを上げたところ、達郎との歯車が合わなくなって転びそうになる。
ここを梨々子が踏ん張って、達郎を引っ張るように走り、何とか体制を立て直して三位でゴールする。
地区の人からは、この『踏ん張り』が大絶賛で、地区の一員になれたような感じがした。
別競技の、潤の『かけっこ』は、『まったく、走らない』というおまけ付きであったが・・・。
そのとき、潤に寄り添って切れたのが、始めて来たときに立ち寄った写真館で見た家族写真に写っていた中年の女性だ。

こんな感じなので、「区民運動会の後の記述なのだろうか」などと考える。

−−−

かつてのアイドル・『林マヒナ(本名:アサヒ)』との淡い関係。
会って、話をするだけの『何でもない関係』なのだが、当然後ろめたい気はしている。
マヒナもこの町の出身で、現在、ここに住んでいる。
実は、マヒナもメンズショップ竹内の子役モデルだった。
これが縁で、マヒナは、アイドルへの道が開けたのだ。
梨々子を『特別なひと』と思いつつ、梨々子のことを思って去っていくマヒナ。
「メンズショップ竹内のモデルになった人は、必ず運が開けていく」、「旦那さんも、今に来る」という言葉を残して・・・。

−−−

ここに来て、既に10年目になっている。
メンズショップ竹内での、モデルの仕事は今回で卒業(最後)であるというはなしとともに、「おもしろいものをみつけたよ」という達郎。

「マヒナとの関係を知られたのか」と、驚く梨々子。

達郎がいったのは、メンズショップ竹内のかつての広告に(若い頃の)藤沢が写っていたということ。

−−−

最後は、潤のピアノの才能が、尋常ではないということをピアノ教師にいわれる。
そして、東京のプロのところにレッスンに行くところで、はなしは終わっている。
10年日誌をプレゼントしてくれた『筒石さん』は、ところどころに登場している。
デコパージュの個展を開いたり、夫の他に自分の仕事を肩代わりしてくれる妻が欲しいといったり、最後には夫と離婚した女性として登場する。

最後は、よく分からないが、幸せな家族のものがたりという感じだろうか・・・。
そして、平凡な、普通の家庭・家族が一番強いのだということ、ひとりひとりは孤独であるが、それぞれの絆で繋がっているということがいいたかったことなのだと思うことにした。




#情報科教員MTの読書記録・・・・2013-06-27から2013-06-29
                     3日で1回読み終えた。

#実投稿時間は2013-08-01 12:11ころである。
 また、随分経ってしまった。

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2013年06月26日

『痺れる』を読了!!

沼田まほかる氏の『痺れる』を読み終えた。

『痺れる』 沼田まほかる・著 『痺れる』 沼田まほかる・著

9つの短編集。

『林檎曼荼羅』、『テンガロンハット』、『普通じゃない』、『エトワール』がお気に入り。

その中でも『テンガロンハット』は、材料費だけで家の修理をしてくれる男のものがたりなのだが、頼んだら最後、この男はどんどん気になるところを見つけて、勝手に修理してしまうというところがミソ。
請求するのは材料費だけなのだが、翌日も、その翌日も、更にそのまた翌日も、家中の気になるところを修理してしまい、とどまるところを知らない。
こんな男に取り憑かれてしまった女性の恐怖を語っているものがたりだった。

『普通じゃない』のラストシーンで、被害者の老人の『入れ歯』が、シュルシュルと自分(加害者の女性)方に迫ってくるところは笑える。
いや、本当だったらゾッとするシーンなのだが・・・・。

どのものがたりも普通じゃない人たちのものがたりなので、ここでは多くは語らないことにしよう。


#情報科教員MTの読書記録・・・・2013-06-17から2013-06-26
                      10日で1回読み終えた。

                      ページ数的には3日か、4日
                      もあれば読めるくらいなのだ
                      が、電車で寝ていることが多
                      かったのか、気がつくと10日
                      も経ってしまっている。





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2013年06月16日

『アミダサマ』を読了!!

沼田まほかる氏の『アミダサマ』を読み終えた。

『アミダサマ』 沼田まほかる・著 "『アミダサマ』 沼田まほかる・著

『まほかる作品』の3作目であり、多くの読者と同様にわたしも『まほかるワールド』に引き込まれてしまっている。
この『アミダサマ』という作品は、沼田まほかる氏のバックボーンである仏教体験と仏教知識に裏付けられていて、主な登場人物のひとりである筒井浄鑑(つついじょうがん)という和尚の精神世界なども垣間見られて興味は尽きない。

なにより、その最初のシーンで主人公の『ミハル』に『呼ばれる』ところから、ぐっと引きつけられてしまう。
『ミハル』とは、寺の近くにある修理工場の廃車置き場にあった冷蔵庫に遺棄されていた幼女である。
浄鑑ともうひとりの男である『工藤悠人』は、このミハルの声なき声(作品中では『コエ』と表現されている)に導かれてここまで来たのだ。
作品中の説明によると悠人は、この当時は22歳の若者である。
浄鑑が勤行中に『コエ』を聞くシーンも素晴らしいし、工藤悠人が『コエ』に導かれて、レンタカーを借りてまで『コエ』の先を目指していくシーンの緊迫感も素晴らしい。

浄鑑には、そのままにしておくという選択肢もあったのだが、現場で工藤悠人にあったこともあって、結局、廃車置き場にあった冷蔵庫のドアを開けることにする。
勿論、中にいたのは『ミハル』である。

浄鑑が寺で預かることにして、浄鑑と、その母千賀子によって大切に育てられることになったミハルなのだが、やはり、尋常な子ではなかった。

ミハルが来てからは、平和な町であった寺の周りで二人の自殺者が出たりして来る。
また、浄鑑の飼っていた老猫がいよいよその生を全うしようとするのだが死ねない(死なない)などということが起こってくる。
どうやら、ミハルの力による物らしい。
ミハルを説得しつつ、老猫の弔いをしようとする浄鑑。

浄鑑の母、千賀子にも異変が起きる。
異様にミハルを可愛がる。
認知症的なところも千賀子に出てき始める。
そして、時が経ち千賀子も寿命が迫ってくるのだが、かつての老猫のときと同じように、千賀子の息が絶えるのをあらがうような力が働く。
千賀子を無事に逝かせようと努力する浄鑑。

−−−

悠人と、悠人の愛人、律子。
律子も変わった女性で、どんな状況であってもよい方向に考え、その状況を飲み込んでしまうという特殊な力の持ち主である。
『コエ』に導かれて、ミハルのもとにやってくる悠人と律子。

「カアサン(浄鑑の母、千賀子)はアミダサマになってしまった」と、カアサンを追っていくミハル。
老猫のときと同様にあの世から引き戻すというか、あの世に逝かせないようにするミハル。

コエに導かれて来た悠人だが、それを引き戻そうとする悠人。
悠人を懸命に支える浄鑑。
緊迫した世界、並びにかなりの『とき』が流れている感じがする。

そし、その緊迫した状況を破るように、「悠ちゃん」という律子の声。
現実の世界に引き戻される悠人と浄鑑、そして律子。

この世とあの世の境目での、そして精神世界での出来事なのだろう。
よく分からないけれども、カアサンの逝ってしまった世界に、ミハルも逝ってしまったのであろう。
このラストシーン、映像でみてみたい気もする。



#情報科教員MTの読書記録・・・・2013-06-10から2013-06-16
                     7日で1回読み終えた。


#実投稿時刻は2013-06-24 22:08ころである。



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2013年06月09日

『猫鳴り』を読了!!

沼田まほかる氏の『猫鳴り』を読み終えた。

『猫鳴り』 沼田まほかる・著 『猫鳴り』 沼田まほかる・著

第一部から第三部までの三つの部分からなる作品で、モンという名の一匹の猫が一本の時間軸に流れているおはなしである。
第一部では、自分の庭先にやってきた仔猫を複数回捨てに行くものがたりだ。
ようやく授かった赤ちゃんを流産してしまった夫婦(藤治と信枝)が主人公で、藤治はそうではなかったが、仔猫を育てることを信枝が頑なに拒む。
信枝も仔猫が嫌いではなかったのだと思うが、流産してしまった自分の赤ちゃんと重なるのが辛かったのだろう。

しかし、その都度、信枝たちのもとに戻ってくる仔猫。
この辺のシーンも、象徴的である。

最後には、仔猫を捨てたという少女・アヤメも現れ、信枝はアヤメに仔猫を貰う(第二部のアヤメの言葉によると『預かる』)ことになる。
このとき、信枝がアヤメに話したことが、「『自分の赤ちゃん』として大切に育てる」ということだった。
仔猫のモンに、流産した自分の赤ちゃんが重なって頑なに拒んでいた信枝が、徐々に自分の赤ちゃんであるということをモンに感じるようになっているところが切ない。

第二部は、不登校で引きこもりの行雄のものがたり。

父親は行雄と十九しか違わない三十二歳

ということだから、行雄は中1か中2ということになる。
ペンギンが欲しいと父に言い寄るが、父が家に持ってきたのは仔猫だった。
この仔猫は、その後になくなってしまう。

行雄とモンとの関わりは、行雄がアヤメ(有山アヤメ)と同級生だということ。
第一部のアヤメ(『(小学校)三年生くらいか』と書かれていた)も、中学生になったことがわかる。
アヤメはモンを連れて、公園に時々きているが、行雄はそのアヤメが公園にきていることを知っている。

この行雄はかなり危ない状態で、自ら凶器を持っていて幼児を狙っている設定だ。
狙っていた幼児が、凶器をおもちゃと勘違いして欲しがったので、未遂に終わったというものがたりになっている。
不審に思った母親が通報し、行雄の父親が警察に呼ばれる。
その母親に向かって「あなたは、息子の命の恩人です」など、訳の分からん勘違い発言を繰り返し、その場をやり過ごす。
家に帰ってからのその後の親子の会話で、行雄の未来もよい方向に向かっていきそうである。

第三部は、だいぶ時が経ち、モンを育てている夫婦も、残念ながら信枝の方はすでに亡くなっている。
藤治も六十も半ばを過ぎた歳になっている。
当然モンも年老いた猫になっていて、藤治がモンの看病をしたり、動物病院に連れて行ったりという状況だ。
最後に、藤治がモンを看取るところではなしが終わっている。

『九月が永遠に続けば』と比べれば、比較的すんなり読める物と思われる。


#情報科教員MTの読書記録・・・・2013-06-07から2013-06-09
                    3日で1回読み終えた。

#実投稿時間は2013-06-24 17:40ころである。


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2013年06月06日

『九月が永遠に続けば』を読了!!

沼田まほかる氏の『九月が永遠に続けば』を読み終えた。

『九月が永遠に続けば』 沼田まほかる・著

千街晶之氏の解説(文庫版・巻末解説)によると『第五回ホラーサスペンス大賞』受賞作だとのこと。
6回で終わってしまった賞だが、その受賞作品を、偶数回の受賞者は幻冬舎が、奇数回の受賞者は新潮社が刊行するという決まりで選考されていたとのことである(賞の主催は幻冬舎・新潮社・テレビ朝日の三社が主催)。

読売新聞の2012-02-26朝刊の『顔』欄に『沼田まほかるさん』として沼田まほかる氏の紹介記事が載っていた。
このとき、私は『まほかる作品』は一作も読んでおらず、ただ、「本屋さんでよく目にする作家さんだな」という認識しかなかった。
勿論、その前から『まほかる』、『まほかる』と騒がれていたことは耳にしていたので、『大型新人登場』みたいなPOPをみて、「若い人なんだろうな」と間抜けなことを考えていた。

この読売新聞の『顔』欄を読んで、まほかるさんの顔と年齢、女性であること(予想的中で女性であったが、『かおる』とか『ひかる』とか、読みが『る』で終わる名前の場合には男性が女性か迷うことも多い)、今度の作品『ユリゴゴロ』で大藪春彦賞を受賞することになったことなどを知った。

今回は新刊を買ったわけではないので申し訳ない限りだが、この『九月が永遠に続けば』の他に、『猫鳴り』、『アミダサマ』の三冊を購入してある。
「何となく読んでみたいな」と思って、興味はあった作家の方である。
この読売新聞の『顔』欄を読んで、衝撃が走った。
「結構年配の方なのだな」ということと、その経歴。

実家のお寺を手伝った尼僧だったこと、会社の経営者になったこともあること、読売新聞の『この記事』の表現によると、『対人恐怖』でと書かれているがどちらも失敗に終わったようである。
そして、ひとりでできる仕事として『作家』になったということを知った。

随分、余計なことを書いてしまったので、ストーリーはさっと書くにとどめることにする。

主人公の『水沢佐知子』は精神科医の夫・『安西雄一郎』と離婚し、今は母一人子一人で暮らしている女性だ。
その息子は『文彦』といい、この息子が失踪したところからものがたりが始まる。
『文彦』の友人、『ナズナ』、その父『ダディ(服部)』。
世話好きの男で佐知子の世話をいろいろと焼いている。

佐知子が関わった『犀田勉』。
自動車教習所の若い教員で、この男も文彦の失踪事件と何らかの繋がりがありそうなのだが、電車の人身事故で亡くなってしまう。
犀田と、もう一人の『若い女性』との関係。
この女性と文彦との関係は?

精神科病院の院長・安西雄一郎の新しい妻『亜沙実』。
亜沙実の過去などが、つぎつぎに語られていく。

文彦は無事に戻ってくるのかなど、興味は尽きない。
かなり『えぐい話』がつづくので、ぼやかして書いているのだけれども、結末には一抹の光が見えてきたと考えていいのだろう・・・・。


#情報科教員MTの読書記録・・・・2013-05-31から2013-06-06
                    7日で1回読み終えた。


実投稿時間は2013-06-23 23:05ころである。

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2013年06月01日

2013年05月に読んだ本たち

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2013年05月30日

『教室の亡霊』を読了!!

内田康夫氏の『教室の亡霊』を読み終えた。

『教室の亡霊』 内田康夫・著 『教室の亡霊』 内田康夫・著

つい最近購入し、比較的あいだをおかずに読んだ本である。
奥付を見ると『2013-05-25初版発行』と書かれているので、出た当日に購入したのか、もしくは、先行販売で少し前に平積みされているものを、もう少し前に買ったかしたのだろう。
ここまで書いて、我が家に積み上げてある『近くの本』をパラパラやっていたらその本と同時に買ったという記録の残った『教室の亡霊』のレシートが出てきたので2013-05-23に購入したことがわかった。
少なくとも2日ほど、先行販売されていたのですねぇ・・・・。

巻末の自作解説を読むと、2010年に『作家デビュー30周年記念』として、この『教室の亡霊(中央公論新社)』と『神楽島(文芸春秋社)』、『不等辺三角形(講談社)』をほぼ同時期(3ヶ月おきとのこと)に出版した企画物であることが書かれている。
そして、三社合同の新聞広告(全面広告)を出したとのこと。

この新聞広告や作品(単行本)が発売されたときの状況については、何となく覚えていた、「すごいなぁ、こんな分厚い作品が立て続けに出てくるんだ」と唯々驚いたものである。

そう、新聞広告についても全面広告だったので内田康夫氏のパワーのすごさに驚いたことを覚えている(この新聞広告は切り抜いて取っておいたので、どこかをさがせば出てくるはずである)。

ということで、この作品は『学校』や『教育界』が舞台であり、執筆中に起こった『大分県教育委員会汚職事件』がモデルになって、ストーリー展開も変更されたとのこと。
プロットを作らない作家ゆえの変幻自在な対応である。

物語の舞台は『群馬県』に設定されているが、勿論、全くのフィクションであり、物語の内容と実在の『群馬県』並びに『群馬県の教育界』とは全く関係のないおはなしである。


事件の被害者は『澤吉博(さわよしひろ)で、その娘も教員を志望している。
かつて自分が教壇に立っていた中学校の教室にて、沢吉博は毒を盛られて亡くなってしまう。
ヒロイン役の『梅原彩(うめはらあや)』は英語の『代用教員』で、被害者である澤吉博の胸ポケットに沢と共に梅原彩が写っている写真が見つかったことから、関係を疑われる。
写真自体は『合成写真』であることがわかったものの、一度疑われ出すとなかなか嫌疑を晴らすのは難しい。

梅原先生のここのところの異変を感じ取った教え子の竹内一記(たけうちかずのり:梅原のクラスの生徒で梅原が顧問をしている陸上競技部の部員)が浅見光彦に相談を持ちかけ、事件が光彦のもとにやってくる。
竹内少年は、『伊香保殺人事件』で登場した『岡野松美(おかのまつみ)』の親戚の子だ。
同じ陸上競技部には山本順英(やまもとじゅんえい)という3年生がいて、その父親がモンスターペアレント。
試合で負けたので代表選手にはなれないはずなのだが「息子を代表にしろ」と押し込んでくる男だ。
実は、この父親・山本浩司(やまもとひろし)は第二の被害者となってしまう。

梅原の父・梅原雄一朗(うめはらゆういちろう)は商工産業課の課長で、母・千鶴子(ちづこ)とは仲のよい夫婦である。

主な登場人物は、県会議員の『名越敏秋(なごしとしあき)』と『池永恵一郎(いけながけいいちろう)』、梅原が勤務する中学校前の白い邸宅に住む『結遼資(ゆいりょうすけ)』という若い男性。
池永老人の紹介で、『人事・職員録の生き字引』の笹嶋一洋(ささじまかずひろ)という男性と会う浅見光彦。

梅原彩が勤務する中学校の校長の他、学校側の主な登場人物は国語教師の『佐久間義雄(さくまよしお)』、体育科教師の『古賀浩美(こがひろみ)』英語科(?)主任の『高畑育子(たかはたいくこ)』など。

はなしが進むにつれて、事件の中心を占めるものは『教員採用に関わる汚職事件』を呈してくる。
途中から犯人らしき男が絞られてくるが、『悲しい過去』と、その男たちの関係が明らかにされていく。





#情報科教員MTの読書記録・・・・2013-05-26から2013-05-30
                     5日で1回読み終えた。

#実投稿時間は2013-06-03 17:18ころである。

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2013年05月26日

『フリーター、家を買う』を読了!!

『フリーター、家を買う』を読み終えた。
ここのところ連続して読んでいる有川浩作品。
その中でも、少しだけ異質な存在。

『フリーター、家を買う』 有川浩・著 『フリーター、家を買う』 有川浩・著

ラブコメ的要素が全くないわけではないけれども、少々少ない。
今までの作品が真面目でないというわけでもないけれども、どちらかということこの作品はシリアス。

でも、カチカチのシリアスストーリーという感じてもなくて、有川浩特有の『スピード感』、決してスーパーマンではないけれども、普通の青年の『一途な頑張り』と『ハッピーエンド』、そして少々のスパイス的『ラブコメ』があって、読後感が爽やかである。

ストリー的には、タイトル通り、ちゃらんぽらんなフリーターが家を買うおはなし。
しかし、そこには涙なしでは語れない『素敵なおはなし』が詰まっている。

主人公の武誠治(たけせいじ)は元々はちゃらんぽらんなフリーターであった。
もう少し遡ると、一応正社員として採用され会社員になったことはあるのだが、(自分の頑張りのなさで)3ヶ月でやめてしまった経歴を持っている。
それも自分の精神的な弱さなどは抜きにして、会社が悪いと思っている男であった。

その後はフリーター人生。
何度か職場も変わっているが、最初の会社と同様で自分に悪いところはないと思っている。

姉・亜矢子はしっかり者で、既に医者と結婚して独立している。

父・誠一は『経理の鬼』などと呼ばれている男だが、少々、酒に弱く、今住んでいるところに最初引っ越してきた時に町内会のイベントで『酒の失敗』をしている。
これが原因で、母・寿美子は町内会の人々(いわゆる『おばさん連中』)から、いじめられてきた。
そして、それが長年続いてきたことが原因で、『重度の鬱状態』・『かなり強い妄想状態』(病名的には『全般性不安障害』というらしい)に陥ってしまった。

姉の亜矢子のアドバイスで、誠治は母を精神科の病院に連れて行き、現状を知る。
完全に直すためには引っ越ししてこの家のある地から移らないことにはダメだという。

頑なな父は頼れず、母の看病を余儀なくされる誠治。

ここから奮起して、バイトの方も辛い肉体労働も6ヶ月も続けたり、それが認められて正社員に採用されたりという展開である。
正社員になった誠治の活躍がはじまり、なんと採用担当のしごとなども任されてしまう。
この採用方法なども素敵。
ダメダメだった自分の過去を振り返り、採用条件には

新卒、一切お断り。
第二新卒、フリーターのみ大歓迎!
もちろん、採用は正社員!

入社後、六ヶ月感は工事現場で研修。

というものを考えだし、社長のOKをもらっている。

ここで採用したちょっと軽めだけれども愛おしい性格の『豊川哲平』と、東工大出身の『千葉真奈美』が加わる。

姉から自由に使ってよいといわれて預かった100万円と、この会社で自分が働いてためた200万円を頭金にして家を買うまでのおはなし。
ここまでに、語られる一つ一つのものがたりにぐっくるのは私ばかりではないはずである。




#情報科教員MTの読書記録・・・・2013-05-23から2013-05-25
                     3日で1回読み終えた。

#あとは『図書館戦争』6冊と『シアター2』、『ストーリーセラー』くらいかな。


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2013年05月23日

『ラブコメ今昔』を読了!!

昨日、有川浩氏の『ラブコメ今昔』を読み終えた。

『ラブコメ今昔』 有川浩・著

ラブコメ今昔
軍事とオタクと彼
広報官、走る!
青い衝撃
秘め事
ダンディ・ライオン−またはラブコメ今昔イマドキ編−


という6編の短編集である。
表題作の『ラブコメ今昔』は二等陸佐で空挺団の大隊長を務める今村和久のものがたり。
隊内紙の企画で、50を過ぎた男とその妻との『馴れ初め』を語ってもらうという『白羽の矢』が立ったものである。初回なので、階級の上の方に語ってもらい、まず企画そのものを成功させたいという意図があるという。

インタビュアーは新任の矢部千尋二等陸尉。
コンビのカメラマンは吉敷一馬一曹。

矢部千尋は新任とはいえ、しぶとく今村二等陸佐に迫り、「妻の許可もいるだろう」と逃れたのを逆手にとって、挙げ句の果ては今村の家まで押しかけて『奥様の許可』まで取ってしまう。
新任の女性尉官に追い詰められた今村は、しぶしぶその『馴れ初め』を語ることになるというものがたり。
今村二佐の語ったことは書かないが、素敵な『馴れ初め』であったことは間違いない。

−−−−

6作目の『ダンディ・ライオン−またはラブコメ今昔イマドキ編−』とは、サブタイトルにあるように1作目の『ラブコメ今昔』と対になる作品である。

矢部千尋三尉と吉敷一馬二曹が知り合うときのおはなしだ。
カメラ好きの父の愛読書、つまり『カメラ雑誌』を何となく眺めていて見つけた吉敷一馬・公務員の『ダンディ・ライオン』という作品。

『茎が折れて地を這っても、花は天を向いている』タンポポの写真である。
何となく『不屈』の闘志を感じさせる作品。

この写真に俄然興味をもった千尋が、隊内で吉敷一馬を探し、アタックするものがたり。
最初の出会いで、千尋から、写真から感じられるテーマが『不屈』であることをずばりと当てられて舞い上がってしまい、それ以来千尋に対して妙に反発を覚えてしまう。
別の機会に、「少し、おはなしがしたい(お茶でもできないかと思って)」という千尋に向かって「命令なら従いますが」とくってかかる一馬。
自衛隊では最悪の言葉であるとのこと。
気まずい雰囲気になってしまったふたりだったが、その後、一馬がとった行動が素敵である。

しょげてボーッとしていた千尋を庭に見つけ、(ちょっとストーカー的だが)遠くから望遠で千尋を追い、野良猫と戯れていて最高の笑顔の千尋を何枚も撮影する。

その中の最高の一枚を大判にして、郵送する。

気に入らなかったら捨ててください。
もし、気に入ったら、○○○−○○○○−○○○○マデ

とコメントを入れて・・・。

有川浩作品は、なんといってもハッピーエンドなところが好きだ。
他の4作品も同じである。




#情報科教員MTの読書記録・・・・2013-05-20から2013-05-22
                     3日で1回読み終えた。



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2013年05月19日

『植物図鑑』を読了!!

有川浩氏の『植物図鑑』を読み終えた。

『植物図鑑』 有川浩・著 『植物図鑑』 有川浩・著

テイストは異なるが、植物をモチーフにした小説に梨木香歩氏の『家守綺譚』がある。
『家守綺譚』の方は格調高い感じだが、この『植物図鑑』はラブコメ度満載のラブラブ小説。

目次を追ってみると

ヘクソカズラ
フキノトウ・フキ そしてツクシ
ノビル・セイヨウカラシナ
春の野花−タンポポ・イヌガラシ・スカシタゴボウ
ワラビ・イタドリ
ユキノシタ・クレソン
ノイチゴ
イヌビユ・スベリヒユ そしてアップルミント
アカザ・シロザ・ヨモギ そしてハナミズキ
巡る季節


家の前で『拾った』という樹(いつき)という男のひとと一緒に住み、野草を摘みに行くという『お散歩』をしながら親密になっていくハッピーエンドのものがたり。

もちろん、一波乱あるけれども、ハッピーエンドだなぁ。


#情報科教員MTの読書記録・・・2013-05-17から2013-05-19
                     3日で1回読み終えた。


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2013年05月16日

『県庁おもてなし課』を読了!!

『県庁おもてなし課』を読み終えた。

『県庁おもてなし課』 有川浩・著 『県庁おもてなし課』 有川浩・著

今をときめく、『有川浩』の作品。

4月に入って直ぐ、『出たて』を買ったもの。
帯をもう一度見てみると、5月11日から映画が公開されていたことを知った。

映画『県庁おもてなし課』

県庁おもてなし課の新人・掛水が、高知県の振興計画に関わりながら成長していくものがたり。
もちろん、ラブコメ的要素もばっちり。

おもな登場人物は、県庁側が

 掛水史貴(かけみずふみたか)・・・もちろん、主人公の『県庁職員』。
 明神多紀(みょうじんたき)・・・・・・・臨時職員(アルバイト)で、
                      唯一『民間の視点』を持っ
                      てている女性。

                      吉門の

『課に一人、外部の人間をスタッフとして入れろ』

『まず公務員でないのが絶対条件。そんでフットワークが軽くて、学歴がなくてもいいから気が利く奴。むしろ変に学歴のブライドがない奴の方がいい、そして、できれば若い女』

                      という提案で、掛水が課に
                      推薦した女性だ。


 下元邦宏(しももとくにひろ)・・・・・おもてなし課の課長。
                     敏腕課長という感じはしないが
                     課のメンバーの意見をよく聞い
                     て的確な指示は出せる人。

 近森圭介(ちかもりけいすけ)・・・おもてなし課の先輩職員。

このおはなしの『キーマン』
 吉門喬介(よとかどきょうすけ)・・・高知県出身の売れっ子作家
                      で観光特使に選ばれたところ
                      から県庁おもてなし課や掛水
                      とのつながりができる。

吉門の紹介で、おもてなし課との接点ができた『元県庁職員』

 清遠和政(きよとおかずまさ)・・・・元県庁職員で『パンダ誘致
                      論者』だったが、今は民宿
                      きよとおの『おやじ』兼、観
                      光コンサルタント。

 清遠佐和(きよとおさわ)・・・・・・・・和政の娘で、喬介とは、血の
                      繋がりのない兄妹。父を県庁
                      から追い落としたことを、恨ん
                      でいる『嫌県庁・論者』。

他の課員たちが『多紀ちゃん』と呼ぶ中で、掛水一人がこだわって『明神さん』といって話が進む中、自分が成長し、自信を持って『多紀ちゃん』といえるような人間になったら、名前で呼ぶことを宣言する。
この掛水が、吉門と清遠の薫陶を受けて成長していく過程が過程が楽しい。

ラストで、「多紀ちゃん」と、掛水が明神多紀に電話するところが、やはり、素敵である。

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2013年05月07日

『ふりむけば飛鳥』を読了!!

内田康夫氏の『ふりむけば飛鳥』を読み終えた。

『ふりむけば飛鳥』 内田康夫・著 『ふりむけば飛鳥』 内田康夫・著

あの内田康夫氏が98日間世界一周の旅をしたときの旅行記である。
舞台は豪華客船『飛鳥』、一人1550万円、夫婦で3100万円なりというもので、一般庶民にはとてもまねのできない旅行である。

もちろんこれは、著者ご自身を主人公に仕立てた『推理小説』ではなく、全くもって『リアルな旅行記』である。

平成10年3月2日に横浜を立ってから、ムンバイ、ドバイ、イスタンブール、ベニス、アゾレス、ニューヨークと周り、6月7日に再び横浜に戻ってくるまでの記録である。

カラー版で随所に写真があり、奥様の写真なども拝見できる。
写真を見る限りでは、ご自宅の居間と寝室を丸ごと船に乗せて、そのまま旅に出たような客室である。
映画あり、カジノあり、ディナーショーあり、ダンス(ご夫婦の社交ダンス)ありと、まるで別世界のようなおはなしだ。

うらやましいという反面、ここに放り込まれたら、私は少々苦しい感じがする。




#情報科教員MTの読書記録・・・・2013-05-06から2013-05-07
                     2日で1回読み終えた。

#実際の投稿日は2013-05-27で、既に20日は経っている。
 読後のイメージはだいぶ薄れてしまったので、こんなところで
 終わりにしておこう。

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2013年05月03日

『ブラザーサン・シスタームーン』を読了!!

恩田陸氏の『ブラザーサン・シスタームーン』を読み終えた。

『ブラザーサン・シスタームーン』 恩田陸・著 『ブラザーサン・シスタームーン』 恩田陸・著

「例によって、ミステリーかファンタジーかな」と読み始めたのだが、恩田陸氏の大学生時代と記憶の中の高校生時代をメインにした『自伝的小説』という感じの物語であった。


実名では無いけれど、楡崎綾音(にれざきあやね)、戸崎衛(とざきまもる)、箱崎一(はこざきはじめ:はこちゃん)という三人が登場人物。
他にも出てくるけれども、戸崎衛のバンド(オズマバンド)のバンド仲間のオズマや、ダンモ(モダンジャズ研究会)の早瀬先輩など。

最初の三人は高校が同じで、皆、名字に『崎』がつくので、『ザキザキトリオ』と呼ばれていた。

三人の登場人物のそれぞれに恩田陸氏が入っているというが、メインはやはり綾音だろう。
綾音は、週に2回ほど喫茶店でバイトをしていた。
昼は喫茶店で、夜はバーになるという。
ここのお客さんでチョコレートをつまみにしながらウイスキーを飲んでいる人がいたが、その人から学部を聞かれ、「文学部で日本文学」と答えたら、「じゃ、将来は作家さんだ。やっぱり書いているんでしょ」ときかれ、「いや、まだです」と答えたというエピソードが書かれていた。

この会話が、今の『恩田陸』の原点(作家希望であることの自覚と作家希望なら書かなきゃいけないという自覚)になったらしい。

その後、一般の会社に勤め始めたものの、書き始めたのだろう。

箱ちゃんは、その後、映画監督になったことになっている。
この小説(?)をを読んだ限りでは、綾音と衛は何となくいい関係にあったのだが、『自然消滅』という結果に終わったらしい。

超絶テクニックの『早瀬先輩』も、就活で一般の企業に勤めたらしいが、今もバンド活動の方も続けている。
巻末には『早瀬先輩』のモデルであった『八木敬之』氏との対談が載っていて、これを読むのも楽しかった。

#細かい筋は追わずに、これくらいにしておこう。



#情報科教員MTの読書記録・・・2013-05-01から2013-05-03
                     3日で1回読み終えた。

#最近、ブログ投稿が滞っていて、ずいぶん前の出来事を遡って
 投稿していることが多いが、この記事はほぼリアルタイムに投
 稿した。
 とはいえ、実投稿時間は2013-05-05 21:20である。

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2013年04月30日

『坂の上の坂』を読了!!

藤原和博氏の『坂の上の坂』を読み終えた。

『坂の上の坂』 藤原和博・著 『坂の上の坂』 藤原和博・著

リクルート・フェローから杉並区立和田中学校の校長(現在は元校長)になった方である。

既にポプラ文庫から、文庫版も出ている模様である。

『坂の上の坂』 藤原和博・著 『坂の上の坂(文庫版)』 藤原和博・著

単行本版では『55歳までにやっておきたい55のこと』と書かれていたが、文庫版では『30代から始めておきたい55のこと』とサブタイトル・キャッチコピーが変更になっている。

序論に『人生のエネルギーカーブに気をつけよ』というものがあった。

最初に考えたのは、本文の中にもあるような『一つ山形』。
生まれてから段々とエネルギーが高まっていって、ある時点でピークを迎え、死に向かって下がっていくものだ。
やはり、これがだいたいの人がイメージするものだと思う。
本文を読んでから、再度考えたのが『二つ山形』。
わたしは転職組(35歳になるときに、10年勤めた前任校から現在の学校に転職したので、まるまる20年勤めて現在21年目に入った)なので、その時期は谷から山になると考えれば『二つ山形』になる。
あと6年くらいで、一応定年を迎えるので、徐々にエネルギーカーブは下がってきているものと思われる。
その意味では『三つ山形』くらいか・・・・。

「『坂の上の坂』を見据えて準備し、エネルギーを高め頑張っていこう」という趣旨は理解できるが、現実問題としてはどこかで下降線になることは否めないだろう。
私の世代は、親の世代をみる介護者としての立場になりつつある世代、もしくはなっている世代で、介護施設などにも何度も足を運んでいるものなのでとても納得はできそうにない。
ただ、満足した状態で死を迎え得られるように準備すべきだということには同意する。
しかしながら、これにもお金の問題がついてくるのだろうということわ考えてしまう。

−−−−

今の日本を少しでもよくする方策のひとつに『みんな一緒に上手く生きる』という考えをやめることが書かれている。

本文内の文章を引用してみると

みんな一緒に「上手く生きる」という高度経済成長期的なスタイルから、それぞれ一人一人が豊かさを楽しむスタイルへの移行です。

「みんな一緒」をやめてピークをずらせば、解消する問題(たとえばラッシュアワー:筆者が注として加筆)です。

会社員は時差出勤などが可能かもしれないが、学生や生徒の場合には出欠・遅刻の問題もあり、決められた時間割の中でその時間に行われる授業を受けたかということもあって時差通学というのは難しいだろう。
もっともe-Learningなどが普及して学校に通わず自宅にて授業を受けられるというようになってくれば可能性はぐっと上がってくるが、その実現に日本ではあと何年掛かるだろうか。

−−−−

『会社以外のコミュニティをつくる』、『パートナーと向き合う』などが書かれている。
わたしは現任校に勤め始めた頃から『合気道』を習っていて、今までの自分の人生からみると比較的異質なことをしている。
ここのところ、出席率が落ちていて、自信を持って『合気道をやっています』とはいえない感じだけれども、ほそぼそと頑張っているというところだろう。
このように会社以外のコミュニティに参加し、いろいろな職種の人と知り合えることは有意義なことだと思う。
しかし、体を動かすこと、そうでないことにかかわらず、これとても限界はどこかの時点でやってくる。
特に体を動かす系統の場合にはその年齢が早く訪れることだろう。

ここのところプログラミング言語からは遠ざかっているけれども、徐々にこちらへもシフトしていき、定年後は世の中に役立つ『アプリでも作っていけたらよいと思っている。

脈絡はないが、気になった点をいくつかピックアップして自分なりの考えなどを書いてみた。




#情報科教員MTの読書記録・・・2013-04-28から2013-04-30
                     3日で1回読み終えた。

 実投稿時間は2013-05-06 12:25ころである。


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2013年04月27日

『不等辺三角形』を読了!!

内田康夫氏の『不等辺三角形』を読み終えた。

『不等辺三角形』 内田康夫・著 『不等辺三角形』 内田康夫・著

名古屋市の正岡家の旧豪邸・陽奇荘と仙台箪笥を巡るミステリー。
実在の施設をモデルにしているが、あくまでもフィクションであるという『不等辺三角形』。
巻末の参考文献によると、『陽奇荘』のモデルは『揚輝荘』とのことで、汪兆銘なども滞在したことがあるという家である。

陽奇荘は元々は正岡家の別荘であったが、その後本宅として長く使われた想像を絶するような豪邸である。
今は無人なっていて、かつての執事が時々保守管理をしている。

さて、その陽奇荘から仙台箪笥の匠である『井上孝夫』が修理を依頼されたところから事件へと繋がっていく。
中沢茂夫という男から「是非に」ということで頼まれたもので、奥松島の井上家から名古屋までの交通費や宿泊費を含めて構わないという。
孝夫一人では運べないので娘の『井上邦香(いのうえくにか)』と共に陽奇荘までその箪笥を受け取りに行く。
箪笥を運ぶ途中で、その箪笥に『幽霊箪笥』の噂があることを知る。

最初の事件の被害者は『中沢茂夫』で、実はこの名前は偽名で、本名は『柏倉哲(かしくら)』(名古屋市中川区山王の松重閘門にて発見される)。
正岡家の執事の仕事をしていた男であった。
容疑者として疑われる仙台箪笥の井上孝夫。

−−−−

兄・陽一郎の大学同期生でワンダーフォーゲル部の仲間であった『正岡佑直』から、浅見光彦に仕事の依頼が来る。

『柏倉の事件を穏便に解決して欲しい』というのが依頼内容だ。

食客のような形で、正岡家に入ることになる光彦。
最初にあったのは、正岡佑直の秘書の河村。
秘書というより、執事という言葉がぴったりの人で、その後の陽奇荘張り込みでも光彦を手伝う人だ。
正岡佑直の子は、美誉を筆頭に妹ふたり。
美誉の叔母である錦恵(きぬえ)、祖父の佑春、お手伝いの澄恵などが登場人物というところだ。

『謎の仙台箪笥』には『隠し棚』と呼ばれる仕組みがあって、外から見た限りはただの板のよう見えるが、そこが引き戸のようになっていて、物を隠せるようになっていたのだ。
そこにあった五言絶句。

冬 秋 夏 春
嶺 月 雲 水
秀 如 多 満
孤 陽 奇 四
岩 輝 峰 澤

正岡の依頼を請けて動く光彦に、井上からこの事実を知らされ、俄然興味がわいてくる。

徐々にわかってくるのだが、その隠し棚の戸板に『在不等辺三角形之重心』の一行が書いてあったことが知らされる。
この辺で、タイトルの意味が理解されることになる。

第2の事件が起こり、『岩澤良和(いわさわよしかず)』という男が被害者となる(松島・貞山堀付近)。
五言絶句にある『岩』と『澤』。
岩澤と正岡家の関係などが説明されていく。
そして、その他にも当然、登場する人物がいるのだが、徐々に真犯人が明らかになっていく。
なるほど、結末はこんな感じかと楽しい数日が終わった。



#情報科教員MTの読書記録・・・・2013-04-23から2013-04-27
                     5日で1回読み終えた。

実投稿時間は2013-05-06 18:06ころである。


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2013年03月18日

『WORKSHIFT(ワーク・シフト)』を購入!!

『WORKSHIFT(ワーク・シフト)』を購入した。
サブタイトルというか、キャッチコピーは『孤独と貧困から自由になる働き方の未来図“2025』となっている和本である。

『WORKSHIFT(ワーク・シフト)−孤独と貧困から自由になる働き方の未来図“2025』 リンダ・グラットン・著 『WORKSHIFT(ワーク・シフト)−孤独と貧困から自由になる働き方の未来図“2025』 リンダ・グラットン・著

実は、この本と『スタンフォードの自分を変える教室(ケリー・マクゴニガル・著)』の2冊に興味を持ち、自分で購入することと、息子の卒業記念にプレゼントするために、ネット上から注文しようと思っていた。

『スタンフォードの自分を変える教室』 ケリー・マクゴニガル・著 ケリー・マクゴニガル・著

で、つい最近の息子との話題の中で、「今日、『スタンフォードの自分を変える教室』の電子版(Kindle版)」を購入したんだ」と息子がいっていたので、「それ、プレゼントしようかと思っていたんだけれども、別の本にしよう」と返した一幕があったもの。

ということで、少々古いかも知れないが『WORKSHIFT(ワーク・シフト)』もわたしにとっては興味深かったので、息子にも有益だろうと思って購入した。

本日、ちょうど今、配達されたので、プレゼントしたら、「あーっ、『WORKSHIFT(ワーク・シフト)』だ。アマゾンの欲しいものリストに入れていたもんだ」と好評であった。

イギリス贔屓の息子であるし、著者のリンダ・グラットン氏はロンドン・ビジネススクール教授ということだから、彼にはぴったりの本であったようだ。


−−−−

ちなみに、自分の分と合わせて、同時に2冊注文したのだけれど、たまたま在庫は1冊しかなかったようで、最初の1冊が本日到着。
わたしの分は3月22日に到着予定である。


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2012年11月01日

2012年10月に読んだ本たち

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2012年10月31日

『いい音が聴きたい』を読了!!

石原俊という方が書かれた、『いい音が聴きたい』という本を読み終えた。

『いい音が聴きたい』 石原俊・著 『いい音が聴きたい』 石原俊・著

奥付に『2002-10-07 第1刷発行』とあるので、今から10年くらい前の本である。
従って、中に紹介されている機器も少々古い。
まずはウォークマンが紹介されているが、本文中ではCDタイプ、MOタイプ、HDDタイプなどが紹介されているものの写真はカセットテープタイプのように見える。
また、フラッシュメモリのタイプは無かったようである。

しかし、例えば次の記述のように、参考になる部分は多々ある。


『ミニコンポは必要十分な装置か』という章に書かれていたスピーカーに関する次の記述は一般論として覚えておくとよいらしい(大いに参考になった)。

スピーカーは、ある程度感覚を開けた方がすっきりした音が得やすい(中央にドライブ機器がある場合は、スピーカーからの振動をうけにくくなることも関係している)。
また、平行にセッティングするとオープンで明るい音が得られ、内振り(内向きという意味らしい:括弧内は筆者の注記)にセッティングすると明晰な音が得られる。

その(お気に入りの)位置からスピーカーを前に出してみてほしい。
おそらくは、ステレオの音場感がより広がって、より明晰な音が得られるであろう。
こんどは壁に接するまでスピーカーを後ろにずらしていただきたい。
音場感は減少したものの、低音がより多く出るようになったのではないか。

壁のそばにスピーカーがあると振幅の大きい低い波長の音が壁を伝わるので低音が出やすくなり、壁から離すと周囲の空間が開けることから音の放射が自然になるからである。

スピーカーのセッティングには一般的に、このようなことがいえるということが書かれていた。

また、よくいわれる『重い機器至上主義』にも言及されていて、

ミニコンポは重くなって当然なのだ。高性能な電源トランスは重い。しっかりした筐体は重い。不要共振を防止したスピーカーのユニットやエンクロージャーは重い。

などと書かれている。

オーディオアクセサリーについては、それを無用とは思わないが、ケーブルを買えたりする前にいろいろと試してみることはあるだろうというスタンスで紹介されていた。
こういう記述をみると大いに信頼できる感じがする。



#情報科教員MTの読書記録・・・・2012-10-30から2012-10-31
                     2日で1回読み終えた。

#ここのところネット上への記事投稿が滞っている。
 この記事は実際には2013-08-12 17:25頃に投稿した。


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2012年10月29日

『蒼林堂古書店へようこそ』を読了!!

乾くるみ氏の『蒼林堂古書店へようこそ』を読み終えた。

『蒼林堂古書店へようこそ』 乾くるみ・著 『蒼林堂古書店へようこそ』 乾くるみ・著

名前はよく知っているが、初めての作家。

蒼林堂という古書店に集う数名の人たちの会話で進行していくミステリー紹介を中心とした小説である。
林雅賀(はやしまさよし)という書評家がやっている蒼林堂古書店。
バツイチの大村龍雄(おおむらたつお)、高校生の柴田五葉(しばたごよう)、小学校教師の茅原しのぶ(ちはらしのぶ)が主な常連客で、後から柴田五葉が連れてきた木梨潤一が加わる。
奥のスペースには数人が座れるだけのカウンター(喫茶スペース)があって、ここでのやりとりが楽しい。
どうやら、しのぶ先生は林雅賀に強いあこがれがあるようなのだが、マサ(林雅賀)の方は何だか素っ気ない。

紹介されているミステリーも知らないものたくさんあって、読書案内としても非常に広がりが出てきて楽しい。

−−−−

実はしのぶ先生が購入していった本や、逆に売った本には仕掛けがあって、強いメッセージ性が隠されていた。
しのぶ先生のメッセージに対して返した林雅賀が渡した本は最悪のメッセージだったのだ。
しかし、それには、もう少し深い意味があって、最後はハッピーエンドである。
最後の章の種明かしは実に楽しく、爽やかな読後感であった。


#情報科教員MTの読書記録・・・・2012-10-26から2012-10-29
                     4日で1回読み終えた。

#ここのところネット上への記事投稿が滞っている。
 この記事は実際には2013-08-12 18:05頃に投稿した

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2012年10月26日

『蜃気楼』を読了!!

内田康夫氏の『蜃気楼』を読み終えた。

『蜃気楼』 内田康夫・著 『蜃気楼』 内田康夫・著

浅見光彦は、いつものように『旅と歴史』の取材で飛び回っている。
今回は『越中富山の薬売り』の取材で富山が舞台である。
いきなり取材に行くことはできないので、兄・陽一郎から紹介されたT薬科大学学長の島村貞蔵を訪れる。
島村から(自分の娘婿になる予定の)高津雅志教授を紹介され、高津から置き薬や漢方薬などのレクチャーを受けた。
予備知識を得た後、向かった先は富山県の魚津。
取材の途中に気まぐれで立ち寄ったところ。
埋没林博物館に蜃気楼を見に行ったのだが、その解説委員(学芸員)の女性が説明を終えた頃、電話が掛かってきて、その女性の祖父が亡くなったことを知らされる。
あろうことか、事件に巻き込まれた模様である。
被害者は梶川尋助(かじかわひろすけ)という老人。
『越中富山の薬売り』で有名な、配置薬の営業をしていた人である。
金品の被害はなく、懸場帳といわれる顧客台帳(売掛帳)のみが紛失している。
ヒロインは梶川の孫で梶川優子(かじかわゆうこ)。
浅見が埋没林博物館で説明を受けた若き女性学芸員である。
400CCと思われるバイクで通勤しているアクティブな女性だ。

祖父の仕事のテリトリーを奪う目的で懸場帳を奪ったのならば、近々、その範囲で仕事を始めるであろうという浅見のアイデアで、掛川優子と浅見光彦は祖父の代わりに『薬売りのまねごと』を始める。
この試みは失敗に終わるが、浅見にとっては貴重な体験をすることができたわけで、『後の自分の記事』に活かされてくる。

週刊誌のグラビアに出ていた幹瀬丈一郎(みきせじょういちろう)と幹瀬由紀仁(みきせゆきひと)。
幹瀬由紀仁の恋人・和泉冴子(本名:多田真弓)。
幹瀬ブランドの広報担当的な仕事をしている浅岡シゲル(本名:浅岡茂)などが主な登場人物ということになる。

梶川尋助が日本の鬼の交流博物館(鬼の博物館・略称『オニハク』)でであった女性とその連れのひとりが幹瀬だということがわかってくる。
この学芸員・高宮明美が梶川老人のことを記憶していて、そのつながりで梶川老人が立ち話をした女性と、連れの男性のことも覚えていたのだ。

そのような中、第2(被害者は和泉冴子)、第3の事件(被害者は浅岡シゲル)が起こってくる。

ラストで、犯人を追い詰めていく展開が素晴らしい。
事件の解決には偶然が重なるのだが、それが決め手となって、ポンポンとはなしが進み、詰め将棋を見ているような感じすらする。



#情報科教員MTの読書記録・・・・2012-10-22から2012-10-25
                     4日で1回読み終えた。

#ここのところネット上への記事投稿が滞っている。
 この記事は実際には2013-08-14 11:11頃に投稿した。


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2012年10月21日

『風の盆幻想』を読了!!

『風の盆幻想』を読了!!

『風の盆幻想』 内田康夫・著 『風の盆幻想』 内田康夫・著

今回の現場は富山県八尾市。
風の盆という盆祭りで有名なところだ。

『風の盆恋歌』 高橋治・著 『風の盆恋歌』 高橋治・著

高橋治氏の『風の盆恋歌(かぜのぼんこいうた)』という作品がドラマ化されてブームに火がついたという。
わたしは、こちらの本は記憶にないが、この本(風の盆幻想)をきっかけに探して購入はしてある。

−−−−

さて、ものがたりの中では、『風の盆』の『おわら』という踊りには、古くからの伝統・伝承に忠実なグループ(体制派:伝承会)と、比較的新しいグループ(アンチ体制派:無玄寺派)に分類されており、両グループはあまり仲がよくない。
体制派の中心人物は安田順蔵(やすだじゅんぞう:今回の依頼者)、安田晴人(やすだはると)の父子、無玄寺派には美濃屋という土産物店の娘・美濃増子(みのますこ)がいる。
安田晴人と美濃増子は、『おわら』の名手で、二人でペアを組んで踊る踊りが評判だった。
現代版『ロミオとジュリエット』のように安田晴人は順蔵の猛烈は反対に会って、別の女性(吉田夏美)と結婚させられてしまう。
この辺から、晴人は放蕩息子のようになり、その筋の者とも付き合うようになっていく。
安田晴人の妻・夏美は小火騒ぎを起こしてしまい顔にやけどを負い、今はお高祖頭巾をかぶって生活している。
やけどを負う前は、美人の若女将として、けなげによく働く嫁ではあった。

美濃増子は津島英之(つしまひでゆき)という男と結婚をする。
今回の被害者は『安田晴人』で、世間の人はこのような結果になってしまっても「『晴人』なら、あり得ることだ」という感じて受け止めている。

依頼を請けて八尾に向かった浅見光彦だが、今回はその依頼の仲介に入った『軽井沢のセンセ』も同行する。
安田の家は『弥寿多家』という旅館を経営しており、浅見光彦と軽井沢のセンセはこちらに身を置いている。
『弥寿多家』に泊まりながら、八尾の町や『おわら』をみたりして、調査活動をしている。

喫茶店『コケット』のオーナー・山田篤子。
たまたま、浅見光彦と軽井沢のセンセが入った喫茶店なのだが、いろいろなことを教えて貰い、懇意になる。

無玄寺主催の『おわら』の最後イベントとして美濃増子と加藤範之(かとうのりゆき)のデュエットとでもいえる踊りが披露された。
加藤範之は『おわら学校』の理事で、それなりの地位にいる方である。
最初は指導的な立場で美濃増子の相手をしていたが、美濃増子がそれまでのブランクを取り戻すと、それまでとはうって変わって逆のような感じになってしまったと述懐している。
ふたりの『おわら』は実に素晴らしいもので、美濃増子と、(亡くなった)安田晴人が踊っているようなものだった。

さて、結末はあっと驚くような展開になっており、『犯人捜し』よりも、光彦による『その他の状況説明』の方が実におもしろい。
「こんなこともあり得るのか」と思った結末であった。


#情報科教員MTの読書記録・・・・2012-10-18から2012-10-21
                     4日で1回読み終えた。

#ここのところネット上への記事投稿が滞っている。
 この記事は実際には2013-08-15 20:57頃に投稿した。


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2012年10月17日

『読書について』を読了!!

『新訳・読書について』という変な本を読んだことをきっかけに、オリジナルであるショーペンハウエルの『読書について』を読んでみた。

『読書について』 ショウペンハウエル・著 『読書について』 ショウペンハウエル・著

その昔、随分前に一度読んだ本。

多くの読者があげているように

読書は、他人にものを考えてもらうことである。

という一文が、きわめて印象的な本であった。

その他の部分で気になったところを引用して、今回は終わりにしようと思う。

良書を読むための条件は、悪書を読まぬことである。人生は短く、時間と力には限りがあるからである。

読み終えたことをいっさい忘れまいと思うのは、食べたものをいっさい、体内にとどめたいと思うようなものである。

学問、文学、芸術の時代精神が、約三十年ごとに破産宣告をうけるのも、このような事情と関係がある。
つまり、三十年たつと、その期間を支配して来た謬見、邪説はすでに極端に走り、ついにその不合理さに堪えられなくなって崩壊する。



#情報科教員MTの読書記録・・・・2012-10-16から2012-10-17
                     2日で1回読み終えた。

#ここのところネット上への記事投稿が滞っている。
 この記事は実際には2013-08-15 21:13頃に投稿した。



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2012年10月15日

『新訳・読書について』を読了!!

『新訳・読書について』を読み終えた。

『新訳・読書について』 ショウペンハウエル・著 渡辺昇一・編訳 『新訳・読書について』 ショウペンハウエル・著 渡辺昇一・編訳

渡辺昇一氏による、ショウペンハウエルについての概説と、新訳とはいえ部分訳が紹介されている本である。
『読書について』は、文庫版(わたしの持っているのは『岩波文庫』)で20ページくらいの身近い文章である。

『読書について』 ショウペンハウエル・著 『読書について』 ショウペンハウエル・著

今回の『新訳・読書について』は、新書版で160ページくらいの本だったので、全文が新しい訳で紹介されているものと思って購入したのだが、全文新訳ではない模様。
その点が残念に感じた。


#情報科教員MTの読書記録・・・・2012-10-14から2012-10-15
                     2日で1回読み終えた。

#ここのところネット上への記事投稿が滞っている。
 この記事は実際には2013-08-15 21:25頃に投稿した。


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2012年10月13日

『日本を滅ぼす教育論議』を読了!!

岡本薫氏の『日本を滅ぼす教育論議』を読み終えた。

『日本を滅ぼす教育論議』 岡本薫・著 『日本を滅ぼす教育論議』 岡本薫・著

その昔、文化庁の著作権課長だった方で、今は、政策研究大学院大学教授をされている方である。
仕事柄、何回か講演を聴かせて頂いたが、頭脳明晰で(この特徴は多くの公務員の方も持っていると思う)、話題豊富でなおかつ、話がおもしろい、話のテンポも素敵(天才的な漫才師や落語家の話を聞いているような感じがして、類い稀な方だと感じた)な方であった。


この本は、『現状認識』、『原因究明』、『目標設定』、『手段の開発』、『集団意思の形成』という5つの項目をテーマにした教育論議の失敗について述べられた本である。

例えば、『目標設定』のところでは、次のようなことが解説されている。

『目的』と『手段』の区別が明確にできていない日本人が多い。
『効率化』ということが、あたかも目的であるかのように論じられることがあるが、『効率化』とは、あくまで『手段』の方の概念であると説明されている。

(前文、一部略)『分かる授業』、『楽しい授業』を実現するための手法を開発していた教員たちが、「誰でもすぐに『逆上がり』ができる指導方法」や「誰でもすぐに『跳び箱』が跳べる指導方法」をあみだして、全国に広めようとしたことがあった。
 ところがこのとき、文部省の体育教育の「専門家」たちが、そのような指導方法の普及を阻止しようとした。
その理由は、「苦労して達成することに価値があるのであって、すぐにできてしまうのはよくない」ということだったという。

目標は、『逆上がりができることや跳び箱を跳べること』なのか、『苦労して達成すること』なのかの、どちらなのかという問題である。
真の目標は『逆上がりができることや跳び箱を跳べること』だと、私は理解するが、これでは議論がかみあわないという指摘なのである。

専門家や評論家がそれぞれ主張する曖昧な目標だけでなく、政府が公式に表明している「目標」も、例えば「生きる力」、「豊かな心」、「確かな学力」、「人間力」といった、抽象的で曖昧なもの、言い換えればスローガン的なものが多い。

これらのものには、誰も肯定的で意義を唱えることは少ないが、具体的にどういうものを指すのかが明らかにされていない。
そのため、超具体的な例で批判が向けられるのだが、議論がかみ合わないことがおこると説明されている。

一般に子どもは親の言うことを聞きたがらないものだ。そこで親が子どもを叱ろうとすると、専門家と称する人々が、「子どもの個性を尊重すべきだ」「押しつけや強制はよくない」「価値観の多様化を受け入れるべきだ」などということを無責任に言い、親たちの自信を喪失させ、方向性を見失わせてしまっている。

そして、

ここでも問題なのは、「すべてのこともたちに必要なこと(法律としてのルールや家庭のルール:括弧内は文脈から私が追加)」と「それ以外のこと(ルールが守られた上での個性:同)」が区別されていない、ということだ。

と説いている。

法律で決められたルールは皆が守らなければならないものだが、親が決めるルールの方はきちんとしたものを親が決めかねているような状態になってしまっていることは問題である。

このように、目標設定においても、かみ合わないことが多々あり失敗に陥っている。

『手段の開発』のところでは、次のようなことが解説されている。

私は、『こころの教育』を徹底し部活やその他のことに成果を上げている学校は多々あると認識しているが、この本では第二次世界大戦の敗因の分析を例として筆者は次のことをあげている。

多くの生命を犠牲にしたにもかかわらず、日本ではいまだにこうした悪しき精神主義から脱却できない人が多く、依然として、「システムの改革」ではなく「人の『心』や『意識』や『精神』を変える」という手段であらゆる問題を解決できる、と信じ込んでいる人が少なくない。

「システム」と「心・意識」の混同という問題は、日本で広く見られる「ルールとモラルの混同」という問題と同根のものである。

日本人は『同質性の信仰』が強く、考え方が同じものが普通であるという意識から、ルールではなくモラルの向上で問題を解決しようという考えが強いという。

しかし、少し考えてみるとモラルの向上で問題を解決しようとする考え方(『心の教育を』というスローガン)は、スローガンそのものに反対する人は誰もいないはずなので、かえって問題を難しくしているということがわかる。

筆者の岡本氏は

1.「思考停止」を招いている
2.「同床異夢」の状態にある
3.「合目的的なアプローチ」がおろそかになる
4.「してはいけないこと」の徹底がおろそかになる

という4点を上げている。

そして、4点目の『「してはいけないこと」の徹底がおろそかになる』という項目で、

(前文、一部略)子どもたちの問題行動と総称されるものについて、「ルール違反」と「モラル上の問題となり得るもの」の区別が十分になされていない。
実際には、子どもたちの問題行動の大部分は、「してはいけない行動をしている」という「ルール違反」であり、「してはいけないことは、してはいけない」という「ルールを守ること」の徹底を行うべきである。

と主張している。

まったくその通りだと、わたしも思う。

しかし、例えば公立中学校などで、問題行動を起こした生徒がいて、「これはルール違反だから、ルールを守らなければならない」と繰り返し指導することはできても、教員の(教育の?)限界で、できることは、ここまでになってしまう。
わたしは岡本氏の考え方(特に4点目)に大いに賛成なのだが、結果として『こころ』に訴えかけなければならないというジレンマに陥っているのが日本の現状なのだと思う。

ということで、『日本を滅ぼす教育論議』というタイトルにまとめられているように、教育界は一筋縄ではいかない難しい状態になっている。


『現状認識』、『原因究明』、『目標設定』、『手段の開発』、『集団意思の形成』という5つの項目の中から『目標設定』と『手段の開発』の部分を取り上げてみた。


#情報科教員MTの読書記録・・・・2012-10-11から2012-10-13
                     3日で1回読み終えた。

#ここのところネット上への記事投稿が滞っている。
 この記事は実際には2013-08-18 12:17頃に投稿した。


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2012年10月01日

2012年09月に読んだ本たち

2012年09月に読んだ本たちを一覧してみた。

『姫島殺人事件』を読了!!(2012-09-04)
『草原の椅子(上)』を読了!!(2012-09-08)
『草原の椅子(下)』を読了!!  (2012-09-13)
『優駿(上)』を読了!!(2012-09-16)
『優駿(下)』を読了!!(2012-09-20)

1ヶ月で5冊読み終えた。

#ここのところネット上への記事投稿が滞っている。
 この記事は実際には2013-08-12 14:08頃に投稿した。

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杉並区にある文化女子大学附属杉並中学校・高等学校で情報科教員をしていた津久井 大(まさる)と申します。
2019年3月に定年後、1年間雇用延長で働き、2020年4月から完全にリタイアしました。

従って正確には『元・情報科教員MTのBlog』ということになりますが、タイトルはこのままにしてあります。

元々は理科教員で、暫く理科と情報科の兼任をしていましたが、教育制度に則った情報科ができた2003年に情報科のみを教えることになりました。
my_twitter
@mtsinfodl